フランス料理の楽しみ方

エスコートの仕方

第一回はフランス料理店のクラスについて、第二回では予約の仕方をご紹介してきました。
今回は、『エスコートの仕方』について。ここでは、男性が女性をエスコートするという想定でご提案していきたいと思います。

お食事は予約の時からスタートしていますから、まずは予約の仕方をしっかり頭に入れてから、コチラを読んでいただけるとよりステキなひと時を過ごせると思います。

それでは、『どうすれば女性に一目置かれるエスコートが出来るか』をご紹介したいと思います。

待ち合わせ
直接レストランで待ち合わせるのもひとつだと思いますが、女性が早く着いてしまうと一人で待たせることになります。
できれば、レストランの近くのカフェ、ホテル内のレストランであれば、ロビーやバーなどで待ち合わせておく方が良いでしょう。
入店時
初めて行くレストランでも、よく訪れている場合でも、どちらの場合でも男性はレディファーストでエスコートしてください。扉を開けて彼女を先に通してあげるのは当然です。
そして、男性がきちんと「予約していた●●です。」と店のスタッフに告げてください。
コートなどを預ける場合も、女性のものから渡すように促してあげるとスマートです。
着席まで
スタッフから「●●様、お待ちいたしておりました。お席へご案内いたします。どうぞ。」と促されたら、まず女性を先に歩いてもらう方がよいと思います。

日本人男性は、自分が我先にと歩いていく場合がありますが、料亭ならともかくフランス料理店では、この行動はいただけません。

親しい女性(恋人や奥様)なら、軽く背中を押してあげるようにすれば、相手もわかると思いますので自然に先を歩いてくれるでしょう。
背中などに触れるのがためらわれるのなら、軽く手を前に出して、「どうぞ」と声をかけてあげると女性も自分が先に歩いてよいのだと理解できると思います。

<階段があるお店の場合>

登るときは、そのまま女性を先に歩いてもらってください。
逆に降りる場合は男性が先に歩きます。これについては、もうお解かりかと思いますが、降りる場合、もしも女性がバランスを崩しても、前にいる男性につかまって支えになれるからです。

◎女性の皆さんへのアドバイス〜お姫様気分を満喫する

日本のしきたりでは、女性は男性の三歩後ろを歩くのが美しいとされていますが、フランス料理店では、この考えは捨ててください。 あなたは、お姫様のように扱われて当然の立場です。逆に変に遠慮してしまうと、エスコートしてくれている男性にも恥をかかせてしまうかも知れません。あなたがお姫様気分を満喫する方が、同伴している男性はもちろん、店のスタッフや他のゲストも安心するのです。

着席
まず、上座(一番良い席)は女性が座ることが基本です。
スタッフが女性に対して勧めてくれる席が、そのテーブルでの上座になるでしょう。
お店のレイアウトやロケーションによって上座が異なるので、スタッフに任せておきましょう。
女性が椅子に腰掛けたら、男性も着席します。
注文

事前にコース料理などを頼んでいる場合はいいのですが、当日に注文する場合は、彼女にまずは確認することがいくつかあります。

・苦手なものはないか?
・お腹のすき具合(コースが良いか、アラカルトが良いかなど)
・何が好みか?
・アルコールの好みと飲める量 など

上記の確認が取れたら、それにあわせた注文をしましょう。

特にコースを注文した場合は、コース料理の中に女性の苦手なものがあったら料理を変えて欲しい旨きちんと伝えることが重要です。その時用意できるものに限られますが、対応してもらえるはずです。

アレルギーなどは当然ですが、そうでなくても苦手な食材を我慢して食べるのは苦痛なもの。エスコートする側が、そういった情報をスタッフにさりげなく伝えるとスマートですね。

食事中

食事が始まったら、女性が楽しんでくれているのかに気を配りましょう。

日本人男性に多いのが、黙々と食べる、相手の食べるペースを気にせずさっさと食べ終えてしまうことです。自分の食べるペースが少し速いなと思ったら、手を止めて話題を提供するようにしましょう。近くにスタッフがいる場合、質問などしてみるのもひとつ。難しい会話でなくても、「この野菜はあまり見かけないんだけど、なんていう野菜なの?」でもかまいません。

ようは、食事のペースをさりげなく遅くするための技なのですから。
女性のペースに合わせて次の料理へ進むようすると相手もゆったりと食事を楽しめます。

そして、ワインなどを女性に注がせたりするのは、やめるべきです。

基本はスタッフに頼むか、近くにいない場合は、男性が自分の分も、女性の分も注ぐべきだと心得ましょう。女性が手を伸ばしたら、「これは、私の役目だから…」と言ってやわらかくさえぎると相手に恥をかかさずに断ることが出来ます。

そして、大切なのは、男性自身もその食事と会話を楽しむことです。
どんな美味しい料理でも、嫌いな人や苦手な人が相手では、その味が半減するのと同じで楽しくない雰囲気で食事をしてもその味を楽しむことは出来ません。 お互いが楽しめてこそ、その食事のひと時はすばらしいものになるのですから。

◎女性の皆さんへのアドバイス〜手酌は禁物

自分のグラスが空いていて、『飲みたいのになぁ…』と思っても自分で注ごうとするのは止めましょう。
相手が気づかない場合は「お料理が美味しいせいか、今日はワインもすすむみたい…」というような話題を振れば、男性もあなたのグラスが空いていることに気づくはずです。
それで気づかないようなら、次回は別なお相手と食事を楽しむべきでしょう(笑)

会計

お席で会計を済ませるお店も多いので、その場合は、女性がお手洗いに立った時に済ませておくのが正解でしょう。

もしも、友人同士なので割り勘にする場合でも後でもらう方が良いでしょう。どうしても、女性の前で支払いをする場合、クレジットカードでの決済が便利。安くても高くても現金のやり取りを女性の目の前で行うというのは素敵じゃない気がします。

よく聞くのが、「彼女がトイレに立った隙にと思うのですが、なかなかトイレに行ってくれないのです」という話。
旧知の仲ならいざ知らず、女性もトイレに行くタイミングを言い出しかねている場合もあります。そういう場合は、「お化粧直しとか、大丈夫?」と言って促してあげると良いでしょう。

「トイレ行っておいたら?」なんていうには直接的過ぎて女性としては興ざめですから…。

最後に

食事が終わって、店を出る時もレディファーストの精神を忘れてはいけません。

コートを羽織る時は、女性の手荷物を持ってあげることも大切。
羽織らせてあげることは抵抗がある人が多いですし、さりげなくコートを羽織らせるのは日本男児にはハードルが高すぎるので、そこまではしなくても良いと思います。(さりげなく出来ればすばらしい!のは言うまでもありませんが…)

そして、男性の方々に申し上げておきたいのは、レストランスタッフに対するあなたの態度を、女性はとてもよく見ているということです。

入店から、食事中、会計時など店を出るまでを女性はちゃんとチェックしています。 偉そうにしていたり、逆にヘコヘコしていたりも感じの良いものではありません。 スタッフが気を遣ってくれたことへのねぎらいの言葉や、笑顔が自然に出ると女性にはとても魅力的に映ることでしょう。

また、予約の仕方にも書きましたが、記念日で訪れる場合などは、事前に店側に伝えておくことで、より良いサービスを提供してもらえる場合もありますので参考にしてみてください。
いずれにしても、女性をフランス料理店でエスコートする場合は、最後まで気を抜かず、そして自分自身も楽しむことが「極意」であるということを心得てお楽しみください。


本ページ協力:キャリエールホテル旅行専門学校
教務部 槇塚 康直先生
シニアソムリエ、レストランサービス技能検定一級技能士、調理師免許などの資格を持つ講師。
『リストランテ ポンテベッキオ』や『レストラン ポンドシェル』などでソムリエとして従事した豊富な経験をもつ。

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