フランス料理博物館 プレジール・ドゥ・ラ・ターブル

Vol.59 2013年10月


フランス料理博物館 plaisir de la table

(プレジール・ドゥ・ラ・ターブル)は、

試行錯誤をくり返しながら、内容の充実に取り組んでおります。

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皆様お元気ですか。
暑い日が過ぎ、やっと凌ぎ易い日が続きます。

今月は牡蠣(かき)のお話しをしましょう。

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マロニエの葉が散ると、パリはどんよりとした
日が続き、短かった夏が過ぎ、秋が深まってくると
街はもう冬の装いに入ってしまいます。

フランスの冬の旬といえば、なんと言っても、
牡蠣(ユイットル)です。
パリでは魚屋はもちろん、市場、そしてレストラン
やカフェの軒先でも、牡蠣が販売されています。
そして、牡蠣がもっとも消費されるのは12月24日の
クリスマスイブ

その日の市場や魚屋は、夕方になると、注文して
おいた牡蠣や魚介類の盛りあわせを引き取りに
やってくる客でごった返します。

牡蠣の種類は、ポルトガル種、それから丸く平たい、
独特な味のするブロン種などがあります。
大皿に盛られたカキや、ウニ、ハマグリ、ムール貝
などは、食欲をそそる見事なものです。

キリッと冷やした白ワインを一杯やりながら、
レモンをカキにしぼり、ツルっと口にすべらせる。
海の香りが口中に広がり、無上の幸せを感じる
瞬間
ですね。
エシャロットのみじん切りをワインヴィネガー
中に入れたソースも良いし、たっぷりバター
ぬったライ麦パンと一緒に食べると、カキの
生ぐささが消えます。

レストランやキャフェの店頭に、カキ屋さんが
店を並べるのが九月からです。このカキ屋さん、
カキむき職人をエカイエと呼びます。
ブルーの長ズボンに上着をはおっただけで、
寒中、ナイフを片手に持ち、もう一方の手には、
それも素手でカキを持ち、実に器用にあけて
ゆきます。
かき氷の上に海草を敷き、客の注文のあった
種類のカキを並べ、レモンをダイナミックに
半分に切ったものを人数分置き、ギャルソンに
手渡します。
このエカイエは、ひとつの職業として認知されて
います。
エカイエによる殻むきコンクールも開かれている
ほどです。
一連の動作は季節の風物詩のようなものです。

日本では、フライにしたり鍋に入れたり、
調理して食べる機会が多い牡蠣ですが、
フランスでは、生で食べることがほとんどです。
基本的に生食文化のないフランスで、牡蠣だけは
特別な存在
といえそうです。
殻ごとグラタンにするなど、調理することも
ありますが、きわめて少数派。
牡蠣の養殖業者に教えてもらった調理法は、
牡蠣にカットしたフォアグラをのせて、
殻ごと軽くオーブンで焼くというもの。
濃厚な風味が重なります!

レストランでは、牡蠣は前菜として提供されます。
牡蠣の値段は1ダース単位なので、一皿は6個
または12個がふつう。日本人の感覚からすると、
前菜なら6個が適度かと思いますが、フランス人なら
一人12個くらいはペロリ
と食べてしまいます。
牡蠣の風味がしっかり感じられるよう、レモンや、
エシャロットを加えたワインビネガーが必ず添え
られます。
潮の香りと白ワインともに、濃厚な身をつるりと
口の中へ!
殻がどんどん山積みになって、食べた数がわかって
しまうので、たくさん食べると恥ずかしいのですが、
ついつい止まらなくなります。

このように、魚屋や市場で売っている牡蠣は、
決まって殻が付いたまま
日本のように殻をむいた牡蠣のパックは、
見たことがありません。
たいてのフランス人は、牡蠣専用のナイフを持って
いて、自宅で殻を開くのです。
まず貝柱をめざして、殻の隙間にナイフをさしこんで、
少しずつナイフを動かしながら殻を外します。
と、言うのは簡単ですが、なかなか自分で開ける
勇気がない人も多い様で、手数料は取られますが、
お店や市場ではお願いして殻を開けてもらって
いるのを見かけます。

フランスの主な牡蠣の養殖地は、
ブルターニュ地方のカンカルや、ボルドーの
北西シャラント・マルティーム県のラマレーヌ牡蠣

ギュイエンヌ地方のアルカション牡蠣などが有名です。
近年、フランス料理の世界では、ハムやソーセージと
いったシャルキュトリー(豚肉加工品)や野菜などの
生産者の名前が、メニューに載るようになしましたが、
牡蠣も同様です。
ノルマンディーのユタビーチの「イヴォン・マデック」、
マレーヌの「ジラルドー」などは、牡蠣の高級ブランド
で、価格も高めです。

ところで、フランスでは1970年代、病気によって牡蠣が
壊滅的な被害を受けました。そのとき、日本から牡蠣の
稚貝
が贈られて危機を救ったことは、よく知られています。
そして、今年3月の東日本大震災を受けた時、フランスの
牡蠣関係者から、日本への支援が行われました。
支援キャンペーンは“France o-kaeshiフランス・
おかえし
”と呼ばれているそうです。
あたたかい絆は、世代を超えて続いていくものですね。

牡蠣にはグリコーゲンのほか、必須アミノ酸をすべて含む
タンパク質カルシウム、亜鉛などのミネラル類をはじめ、
さまざまな栄養素が多量に含まれるため、
海のミルク」とも呼ばれています。
食用としての歴史は非常に長く、世界中で食され、
人類が親しんできた貝の一つです。
一般的に肉や魚介の生食を嫌う欧米食文化圏において、
カキは例外的に生食文化が発達した食材であり、
古代ローマ時代から珍重され、養殖も行われていました。
ナポレオン、バルザック、ビスマルクなどが
カキの愛好家であったことが知られています。

日本では縄文時代ごろから食用されていたとされ、
多くの貝塚から殻が発見されており、ハマグリに
次いで多く食べられていたと考えられています。
大坂では明治時代まで広島から来る「牡蠣船」が
土佐堀、堂島、道頓堀などで船上での行商を行い、
晩秋の風物詩となっていました。

では、かきの風味が楽しめるお料理をやってみましょう


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オイスター シチュー

 材料 2人前
 ・かき(中くらいの粒) 10個
 ・バター 大匙1杯
 ・牛乳 150cc
 ・生クリーム 大匙2杯
 ・ナツメッグ
 ・塩
 ・胡椒
 ・塩味のクラッカー 6枚

 作り方

 1 かきの水気を切ります
   かきをキッチンペーパーの上に広げ、
   水分と、殻の破片を取り除きます。

 2 かきを煮ます    直径20cm位のフライパンを火にかけます。
   かきと牛乳、ナツメッグ、軽く塩、胡椒を
   して、混ぜながら煮立てます。

 3 かきの周りがかたまってきたら火を止め、
   バターと生クリームを加え、ティーカップか、
   小鉢に、銘々の分を盛り分け、クラッカーを
   砕いて散らします。

 注意点は、
 かきを煮すぎない事です。
 かきを煮始めると、先ず周囲がちぢんできます。
 火が通るにつれて、身が丸くしまってきますから、
 この位で火を止めて下さい。
 煮すぎると固くなります。

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☆ お知らせ

 ムッシュ米津の家庭料理のページでは
 『鯖の唐揚げ スパニッシュソース』の作り方を
 ご紹介しています。

 http://www.plaisirdelatable.jp/cooking/index.html

 「切る事は、切り揃える事なり」と教わりました。
 難しい事です。

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 フランス料理に役立つ「フランス料理の食材・機材」では、
 料理に使っていただきたい最高の食材と機材をリンクで
 ご紹介しております。

 http://www.plaisirdelatable.jp/food/index.html

 今月は『チョウザメ』『栗』をご紹介
 しております。

こちらのコーナーも、ぜひご活用ください。

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