plaisir de la table
プレジール・ドゥ・ラ・ターブル
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16世紀の終わりから17世紀にかけて、フランスにアンリ4世という王さまがいました。あのころは宗教争いが激しかったのですが、1598年「ナントの勅令」を発布して、信仰の自由を保障したことで知られています。
なんだか世界史の授業みたいですが、この王さま、農業改革にも熱心で、「農民が週に一回トリ肉入りのポ・ト・フーが食べられるほど豊かにしたい」と願われたそうで、その徳をたたえ「ポ・ト・フーアンリ4世」というメニューがいまも残っています。
フランスでは、スープを「飲む」ではなくて「食べる」といいます。具が多いからでしょうね。たくさん入っている肉と野菜でディナーを用意して、スープは夜食にまわすという経済的な食べ方もあります。
夜食のことをフランス語では「スーぺ」といいます。スープを食べるという意味です。そういえば、ロシアの代表的なスープ、「ボルシチ」も、イタリアの「ミネストロン」にしても、具が沢山入っているのは、同じ様な暮しの知恵からでしょう。
ポ・ト・フーと、やわらかい言葉の響きそのままに。これは古典的なおふくろの味、家庭の味。
ニンジン、カブ、ネギ、セロリ、キャベツなど、いろいろの野菜を牛肉やトリ肉と一緒にマルミットという底のどっしりした台所の主を思わせるような陶器のスープ鍋で、長い時間かけて煮ます。
雪がちらつく季節になると、パリの食料品店や市場には、あみの袋に、1、2人分の野菜を入れて、「ポ・ト・フー」と書き添えたものが並びます。1人住まいの人や、新婚さんたちが買いやすいようにとの配慮で、私などもパリで修業していたころ、休日の朝、これを買ってきては牛肉、トリとともに、ポ・ト・フーをこしらえたものでした。そのあったかい味は異国に暮らすわびしさを一瞬いやしてくれたものでした。ポ・ト・フー。せつなくも、なつかしい味です。
お客さまをもてなすとき、わが家の自慢料理を披露するのもいいですが、季節と目的、お客さまの年齢や好みも頭に入れて、あれこれとメニューを考えるのも楽しいですね。
メニューといっても、皿数をたくさん作るのは大変ですし、食事のあいだ。主婦が台所に立ちっぱなしでは、かえって失礼になります。そこで、このポ・ト・フー。肉や野菜がたっぷり入っていますから、それだけをお皿に盛って、からし、粗塩を添えて出し、スープは別にカップに入れてすすめるようにして、この前と後ろに、オードブルとデザートを加えれば、もう立派なコースです。
直径25cm・深さ20cm位の鍋を用意します。(蒸し器、パスタなべ等お手持ちのものでかまいません。)
煮えた野菜と、肉をを食べ易い大きさに切って土鍋に入れ、スープを張り、食卓で煮ながら召し上がるのも楽しいでしょう。
入りきれない野菜と肉は、後から足して煮ます。
冷やした白ワインと、フランスパンのバゲットを添え、食後には美味しいチーズと、季節の果物など、お鍋を囲んで楽しい食事になるでしょう。
文・写真(イメージ写真)提供:ひかりのくに株式会社
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