plaisir de la table
プレジール・ドゥ・ラ・ターブル
食べものに、おいしさという生命をふきこみことが、料理人の務めであると思います。
一本のニンジンを手にして、どうしたらこのニンジンのおいしさを伝えられるだろうか、形をよくむきそろえ、美しい色合い、軽やかな風味を生かすよう、艶煮にしてみようか。素材をいつくしみ、持ち味を引き出し、味わう喜びを作りだそう、私はそう思いつつ料理を作ってきました。
フランスに旅行した時のこと、親しい友人の家に招かれました。7歳と2歳の可愛らしい男の子がいて、私が料理人だというと、「これオムレツの作り方だよ」と、自分で描いたのでしょうか、イラスト入りの紙を見せてくれました。「卵を流して、フォークで混ぜて、こうして焼くんだ」と坊やの説明が一通り終わったときに、同行したフランスの女性はこういいました。
「よく覚えたわね、でもね、フォークじゃ、おなべに傷がつくから、今度から木しゃもじを使った方がいいよ」。
幼い子供だからといって、「おりこうね」で終わってしまわずに、ひとりの人格として、きっちり向かい合って、ここはこうしたらいいよと真剣に話す。
その姿勢の中に、フランスの味はこうして伝わっていくのだなあっと、あたらめて感じました。
親から子へ伝えられる料理の味が、その国の食文化をささえている、といったらいいすぎでしょうか。できあいのお総菜や、インスタント食品が、まちにあふれている現在、家庭の味をもっと大切にしたいと思います。
米津 春日
資料提供:ひかりのくに株式会社
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